「2009年から2015年3月までににかけて151人ものチベット僧侶が焼身を遂げた・・・。」
2008年のチベット騒乱を受け、この年の北京オリンピックの聖火リレーが世界中から賛否両論注目の的となったことは、もはや記憶の奥に埋もれてしまっている方も多いのではないでしょうか?
あの当時は、日本のさまざまな評論家が「今こそ日本の既成仏教各宗派も一丸となって中国共産党に対して非難の声を上げ、チベットに意識を向けるべきだ!」、とメディアでもその苛立ちを吐露していました。
当時の私も中共に対して強い怒りを覚え、身につまされてはいながらも何のアクションも起こせず、同じ仏教徒であるチベットの人々の過酷な受難をただ映像で知ることしかできませんでした。
その騒乱をひとつの起点として、『焼身』の行為(ガソリンを被り自らに火を放つ)が世界に衝撃を与えました。
北京オリンピックも終わり、その後の日本のお茶の間では、チベットの実状が表だってあまり報道されなくなって久しく、正直私のチベットへの関心もただの知識として、自分の頭の奥に仕舞い込まれていました。
そんな中、この映画祭に足を運び、2009年以降去年に亘るまでのチベットのその後をまざまざと知ることとなり、改めてやるせない気持ちでいっぱいになりました。
以下個人的な感想をつらつらと述べるべきなのでしょうが、どうもそんな気がおきません。
ただ、ひとつだけ述べるとしたら、
ドキュメンタリーの案内人とも言える中原さん、そして池谷監督、そして登場するチベットの人々、
それらを敢えて3者の構造と見たときに、私はそこに共通する想いがあるのだと気づきました。
それは『怒り』よりも『祈り』であるということ・・・。
中国共産党の血に染まった歴史と現在の蛮行に対しての『怒り』を、作品の中では敢えて抑え、チベット仏教の慈悲に根差した『祈り』の波動を映画を見るものにも伝えようとする切実な意図がありありと感じられ、その点が大変宗教的であり且つ他のドキュメンタリーとは一線を画す強烈な印象を放っていました。
是非、中国国内の若者たちにも見てもらいたいものです。
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