来る3月に発行予定の護国寺の寺報『その想い』の1コーナー、『檀家さんに聞く』の取材の為、日高村岩目地にある北添製材所にお邪魔してきました。
私はいつも、この北添製材所の前を通って各檀家様宅での法事に出向き、また小学校時代を振り返っても、毎日この前をランドセル背負って歩いていました。
さらには、日高村と佐川町を跨ぐ加茂という地域に住む多くの人にとっても、この北添製材所は大変馴染み深い企業と言えます。
そんな、地域にとって当たり前にある企業が実は世界遺産と関わっている・・・。
『木材』という観点から、もうピンと来た人もいらっしゃるかと思いますが、この北添製材所で加工されたケヤキ(欅)が何と、
清水寺の舞台を支えています!
( ※ 清水寺は古都京都の文化財を構成する資産の一つとして、1994年に世界遺産に登録されています。) 画像提供 wakasa15thfd 様より
実は、この北添製材所は知る人ぞ知る、日本建築の業界では全国に名の通った製材所なのです。
しかし、そんな事実を加茂に住むほとんどの人は御存じなく、是非何かの機会で紹介できればと前々から思案していたのですが、今回取材を申し込んだところ快く応じて下さいました。
檜や杉などの一般住宅用の建築材を加工するのが大半の製材所では常のようですが、ここ北添製材所の特徴は、ケヤキを扱う点にあります。
なかでも高級ケヤキ。
それらは文化財クラスの寺社仏閣、そして住宅でも純日本建築の化粧材などに使用されます。
全国各地の有名産地にある原木市場に社長自ら足を運び、その熟練の目を通して厳選された原木たち。
社長の鶴の一声の下、その一本一本を社員さん達が息を合わせて『木取り』していきます。
『木取り』とは山から切り出された原木を材木に加工する、正に製材所の本分とも言える作業です。
この日、社長のもとをお伺いした時はちょうど皮を剥ぐ作業の真っ最中でした。
いくら機械に作業を任すとはいえ、枝跡の窪んだ部分なんかの皮剥ぎは、今でも人が手でやる必要があるとのこと。
あたりを見まわすと、さも恐ろしい鋭利な刃が付いた機械が轟音を上げながら材を仕上げていきます。
作業に当たる社員さん達の真剣な表情に、私もシャッターを押す表情が強張りました。
こちらで製材された木は、実は当寺の本堂の柱にも使われております。
それも本堂を4本で支える7寸柱。これらは近畿地方の原木市場から仕入れたそうですが、御陰様で今も伽藍安泰であります。
「いつか鐘楼堂でも建てる時は良いケヤキを寄付するきね!👍」
と、社長からはいつも声をかけてもらっていますが、果たして・・・(笑)。
さらにさらに、こちらで加工されたケヤキは清水寺以外でも、近隣遠方多くの有名寺院に使われており、なんと超有名どころでは伊勢神宮、太宰府天満宮、さらには四国八十八ヶ所霊場の寺院や高知県内のいくつもの名刹の主要な部位に使用されています。
我が護国寺の檀家様でも、四国八十八ヶ所霊場の巡礼をなさる方は非常に多いです。
それを踏まえて、私が各檀家様にお配りする寺報で北添製材所を紹介する最大の理由は、上で述べたような意外に知られていない事実をこの際知っていただくことで、より地域に目を向けて頂き、檀家様同士の親近感を高めてもらうことです。
一般に寺社建築は、地方の末寺クラスでも数億円オーダーの事業になりますので、華やかな落成式に至るまでの道のりには、多くの檀家様からの厳しい御意見が実行委員会に寄せられるのは想像に難くありません。
賛否両論あり、私もいろいろと考えるところがあるのですが、只々贅を尽くしただけの浮世の楼閣に比べると、やはり人々の信仰によって守られてきた重要文化財などには、その修復に携わる多くの関係者の『技』や『想い』、やはりただならぬ重みがそこには在ります。
当然それらが結集して事が運ぶとなると、『お金』も、きれいに言うならば『浄財』も、それなりに額が膨れていってしまい、最終的には当初の予想よりも大きなものになってしまうようです。
まぁ、とは言っても弱小の一地方寺院である護国寺には高級ケヤキは一寸も使用されておりませんが(笑)。
しかし真面目な話、確かな大工さんの技と檀家様の想い、そしてもちろん住職である私の想いで、今の護国寺は在らせてもらっております。
木材についての興味深いお話がいろいろと聞けたのですが、それらはまた次号の寺報で紹介したいと思います。
是非お楽しみに!