バイカオウレンと別れのとき

この日は、ある檀家様の墓地改葬に伴い、撥遣(ほっけん)と呼ばれる、お墓に宿る魂を一旦抜き、聖霊様達に一旦もとの本座に戻っていただく、という趣旨の供養に参らせていただきました。

実は、早朝に佐川町加茂地区にあるバイカオウレンの群生地に行ってみたのですが、時間帯が早すぎて風景が暗すぎたのに加え、どうもその群生地の開花ピークは過ぎてしまっているようでした。

残念な気持ちでいたところ、偶然にも、この日お参りした墓地はまさにバイカオウ霊園とも言うべき場所でした。

久しぶりにこの墓地を訪れたので、すっかりこの場所のプレミアム感を忘れていました。

しかし、呑気に考えていられないのが、近年劇的にご依頼が増えている『お墓の改葬』です。

それも、民家から少し離れた山の中に一基一基設けられたお墓を、車でのアプローチが可能な場所に下ろしてくる、或いは集合霊園に移すことが近年非常に多いです。

そしてそのいずれもが、納骨堂と呼ばれる今後も沢山の骨壺を埋葬できる形式の墓に、一つにまとめて埋葬するという改葬になります。

この傾向は、ただでさえ人が入らなくなっている里山に、さらなる拍車をかけてしまうことから、私個人としては複雑な思いがあるのですが、改葬にあたる各檀家様が有する、『先々の不安』や『子供たちに迷惑をかけたくない』、という心情を伺うと、私には横槍を入れる程の気概も生まれず、 止む無く読経に赴くという現状に甘んじてしまっております。

咲き誇るバイカオウレンの群生と共に葬られる・・・。
この花のファンの方々に言わせれば、何と贅沢な!、という理想の墓地と言えるかも知れません。

ちなみにこのバイカオウレンは、牧野富太郎博士が生涯にわたり愛した花で、ファンの間では『森の妖精』とも呼ばれています。
高知市五台山にある牧野植物園のマークは、この花の葉っぱをモチーフにデザインされています。

護国寺の寺報第2号でも、このバイカオウレンを取り上げていますので、興味のある方は是非お読みください。


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「信念が事実を創り出す」をモットーに、現代に生きた仏教を模索していきます。

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