おらんくのお宮

護国寺がある日高村には、古より土佐国二宮(にのみや)の社格を誇る小村神社があります。

古(いにしえ)という言葉を敢えて使うのは、この神社の歴史がとてつもなく古いからで、一説には587年の創建とも言われています。

587年と言えば、聖徳太子のお父さんに当る用明天皇が治世をしていた時代で、未だ遣隋使さえ送られていない時代です。

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このあたりが千本杉と呼ばれる所以となった杉並木の参道

さらに特筆すべきことは、この神社が所有する正真正銘の国宝である金銅荘環頭大刀拵・大刀身(こんどうそうかんとうたちごしらえ・たちのみ)が、1200年にも及ぶ悠久の時間を伝世品として社殿に保管され、また地域の人々によって守られてきたということです。

出土品に対して伝世品とは、それに関わる人々が先祖代々で大切に守り抜いてきた品を意味し、それは正に連綿と受け継がれた想いそのものであると私は思います。

11月15日のこの日は、毎年の大祭と決まっていて、国宝の大刀もこの日限定で公開されています。

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秋の陽光に透かされた鮮やかな花みこし

太刀と表記しないことからも、平安時代以降から作られた少し反りのある太刀ではなく、それよりも更に古い古墳時代から奈良時代にかけてみられる直刀の大刀であり、且つそれが伝世品として伝わることが大変貴重なことなのです。

私も久しぶりにこの大刀にまみえましたが、歴史の教科書に出てくる聖徳太子が携えている刀ソックリで本当に真っすぐです。(wikipediaより参考画像↓)
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この日、私はフラッと境内にお邪魔したのですが、今年は偶然にも護国寺の檀家様が多くおられる地域が頭家(とうや)として当たっており、檀家でありまた氏子でもある日高村の皆さんのおおらかさに、神仏習合の自然な営みの名残を見た気がしました。

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頭家の氏子さん達に見送られて、太鼓の音と共におなばれの出発です

意外に思われる方も多いですが、明治になるまでの日本は神と仏に対する心理的な区別が今ほど明確にされていませんでした。

その好例としては、親鸞聖人が参られた上越市にある居多神社や、日蓮聖人が富士山の御霊を祀られた群馬県にある富士浅間神社など、鎌倉時代に活躍した比較的ラディカルな開祖達も僧侶でありながら神社に参られています。

さらに、この小村神社と線路を挟んだ南側には神宮寺があり、そこは護国寺と同じ本山修験宗の寺院です。
生前の伊東住職から伺った話では、かつての神宮寺は現在の小村神社の隣にあったそうですが、明治初頭の修験道廃止令や廃仏毀釈の煽りを受け、現在の場所に強制的に移されたようです。

大刀の他に、小村神社の重要文化財として木造の菩薩面(平安時代後期作)が伝わるのも、当時の神仏習合を表す見逃せない点であると思います。

また、小村神社にとどまらず、高知には神仏習合の名残を窺わせる、神社と寺院が隣り合わせになった例が多数見られます。

有名な場所では、しなねさんの名で親しまれる土佐一宮の土佐神社と四国第30番札所の善楽寺、長宗我部元親公を主祭神とする秦神社で親しまれる若宮八幡宮と四国第33番札所の雪蹊寺、さらには曹洞宗の坊さんであった薫的和尚を御祭神とする薫的神社と真言宗豊山派の安楽寺などなど・・・。

神仏習合の話をするとどうしても修験の話をしなくてはならないのですが・・・、この記事の主題はあくまでもおらんく自慢。
時として僧侶という立場を超え、この日高村に住まう一村民として、土佐国二宮小村神社の自慢をしたくなる私なのでした。

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現在の本殿でも300年以上前の造営
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本殿を支える菅柱 水害の多い日高村でもこの場所は一度も浸からなかったそうです
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本殿の真後ろには樹齢700年は超える牡丹杉が控えます

戦国時代までは時の権力者の庇護もあったようですが、高知の多くの寺社に見られるのと同じく、やはり山内家によって多くの社領が没収され、以後その威光に陰りが差したようです。
(事実、戦国時代から江戸時代にかけての土佐国では、多くの寺社のヒエラルキー転換が起きています。)

毎年、午前10時からの神事に始まり、おなばれ、奉納太鼓、踊り、等々午後4時まで終日賑わっているのですが、子守を兼ねての参拝の為バタバタと忙しなく、盛り上がりのピークを撮影できませんでした。

現在はJR小村神社前という駅が名前の如く参道の目の前にできており、公共交通でのアクセスも近くなっています。

日高随一の聖域であり、また時を超えた村民の想いが集まる小村神社にも是非お参りください!


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「信念が事実を創り出す」をモットーに、現代に生きた仏教を模索していきます。

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